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〈グローバルウオッチ〉 共生の未来へ 差異と向き合う 12018年7月7日


「違い」は価値創造の源泉。
“民衆の安全地帯”が必要。
学会員として親子が共に成長することを誓う石川さん一家(左から石川真希さん、次女・幸代ちゃん、長女・美穂ちゃん、夫・清一さん)
学会員として親子が共に成長することを誓う石川さん一家(左から石川真希さん、次女・幸代ちゃん、長女・美穂ちゃん、夫・清一さん)

 現代社会の課題と向き合う「グローバルウオッチ 共生の未来へ」。今回は、人間の多様な差異をどう捉え、どう価値にしていくかという“共生観”について考える。(記事=金田陽介)

 「共生」の考え方は「違い」の存在を前提としている。
 文化・民族・言語・習慣などが違うからこそ、「共生」が問題になる。何をいまさら、と言われるかもしれないが。
 米ジョン・デューイ協会元会長のジム・ガリソン博士は「差異に向き合おうとすると、自身の既成の価値観やアイデンティティーを強く揺さぶられる」と語った(6月16日付本紙)。異なる者同士が、この恐れにも似た「揺らぎ」を越えて、あらゆる意味での差異から学び合っていく社会――それが、どんな人も安心して暮らせる、本当の“共生社会”といえるのかもしれない。
 では、そうした社会をつくる上で、創価学会はどんな役割を担うことができるのだろうか。今回は、「違い」に向き合い、生き方を深める2組の家族を通して、このことを考える。

一緒に考える

 滋賀県守山市に住む石川真希さん(白ゆり長)は、生まれた時から、両親が学会員だった。
 進路に悩んだ高校3年の秋、池田大作先生の「教育提言」を読み、教員になりたいとの夢を抱いて創価大学に進学した。卒業後、小学校教員として地元で働きながら、圏女子部長、滋賀総県少女部長などを務めた。
 “学会2世”で、同総県学生部長などを歴任した夫・清一さん(圏男子部長)は、真希さんの真っすぐな生き方に引かれた。真希さんも、親を大切にする清一さんに好感を抱き、二人は2014年に結婚する。
 翌年、長女・美穂ちゃんが生まれた。清一さんは出産に立ち会った。真っ赤な顔で産声を上げるわが子を抱く。その重みに胸がいっぱいになった、次の瞬間――腰の力が抜けるような感覚に襲われた。
 美穂ちゃんは、右腕の、肘から先がなかった。
 ◇ 
 原因は分からないと医師は言った。だが、真希さんは、自分を責めた。初めの3カ月は妊娠に気付かず運動もしていたのが悪かったのか、あの時に服用した薬か……と、答えのない自問をしては泣いた。「自分の腕を切って、この子にあげたいと思っていました」
 ある日、婦人部の先輩に、そうした胸の内を聞いてもらった。黙って受け止めてくれる人がいることが、ありがたかった。
 先輩は言ってくれた。
 「自分を責め続けることは、仏法の眼から見れば、正しいとはいえないように思う。子どもは親が考えるよりずっと大きな使命を果たすために生まれて来たんだ、と捉えてもいいんじゃないかな」
 目の前が開ける思いだった。
 “私は、「人と違う」からと、この子の将来を小さく見ようとしていた――”
 学会の婦人部の先輩たちは、みんな笑顔で、わが子のように美穂ちゃんも真希さんのことも抱き締めてくれた。そのたびに“これから”に目を向けて歩もうという気持ちが強くなった。この学会の輪の中で育てれば、わが子も自分を愛せる子になるだろうと思えた。
 4カ月健診の時、「別室で受けられますか?」と病院は気遣った。確かに、娘に対する周囲の視線は、これまでも経験している。しかし、真希さんは心から「大丈夫です」と答えた。
 ◇ 
 病院は「筋電義手(注)」を紹介してくれた。この義手の普及に向け、政府の助成を進める動きもある。娘が生まれてから石川さん夫妻は、困難に向き合いながら生きる人のことがよく見えるようになったという。
 美穂ちゃんは今月、3歳になる。おもちゃの引っ張り合いはいつも、1歳下の妹・幸代ちゃんに負けるが、笑顔の多い子に育っている。
 「母親として今も、自分を責める気持ちが、ないわけではない。美穂が成長していく中で、いろんな感情をぶつけてくることもあるだろうし、そのたびに私も、何度も、心をかきむしられるような経験をするんだろうと思います」
 でも、と真希さんは言う。
 「その時も、美穂の周りには話を聞き、他者との違いの意味を一緒に考えてくれる女子部や婦人部の先輩たちが、必ずいてくれるはず。私にしてくれたのと同じように――。そう信じられることが、大きな安心です」
 清一さんもうなずいた。
 「これから同じ悩みにぶつかる人が安心できる社会をつくっていくことも、学会員としての、自分たちの使命なのかもしれません。美穂には、そう教えてもらっている気がします」

“第二の家族”

 マレーシアの首都クアラルンプールに住む、李燕卿さん(支部副婦人部長)は、幼い頃にポリオ(小児まひ)を患った。
 足が変形し、つえを使わなければ歩けなくなった。小学5年の時、父が亡くなってからは、経済的にも苦しむように。行政の支援を受けながら、何とか命をつないだ。
 「でも、当時のマレーシア社会は、障がい者福祉が充実しているとはいえませんでした」
 多民族が暮らすマレーシアでは、経済・教育・就職などで先住民とマレー人を優遇する「ブミプトラ政策」が、1971年からとられていた。中国系の李さんにとっては、社会福祉が遠いように感じられたという。
 それでも、18歳で家庭教師の仕事を得て、自活を試みるように。さらに、教え子の中のある家族が学会員だった。
 「その子の家で教えている間はいつも、母親が唱題する声が聞こえていました。心が奮い立つような響きでした。ある日、その方にお願いして、創価学会の会合に連れて行ってもらったんです」
 会場には、さまざまな背景を持つ人が集まっていた。あるメンバーが笑顔で語ってくれた。「仏法から見れば、私たちは皆が平等に、現実を変える力を持つ人です」
 心に明かりがともった。人間にとって大事なのは「心の財」だと教えられ、笑顔で生きられる人になろうと入会した。
 ◇ 
 唱題が好きになった。
 バイクの免許を取った。
 悩んでいる人を自分も励ましに行けることがうれしかった。
 障がい者の協会で、李さんは卓官發さん(壮年部員)と出会った。車いすで生活していた卓さんは「自分のことは自分でやるしかない」と言う。李さんは「学会は、私を包んでくれる“第二の家族”です」と語った。やがて卓さんも入会し、二人は91年に結婚した。
 卓さんは障がい者スポーツ界を代表する、パワーリフティングの選手。李さんは周囲の学会員と共に、夫の活躍を祈った。92年、バルセロナ・パラリンピックで、卓さんは銀メダルを獲得した。
 ◇ 
 「その後も、けがもなく選手生活を終え、コーチも務めることができました」と卓さん。
 現在、二人は夫婦でタクシー運転手として働いている。客先の子どもの、通学の送り迎えなどを担う仕事である。
 「職にも、お客さんにも恵まれていることは、大きな功徳です」と李さんは語る。
 その上で、言葉を継いだ。
 「体に不自由があっても、今みたいに、人に喜んでもらえる『人柄』を持てたことが、信心して一番うれしかった」
 インドの詩人タゴールは語っている。「人間の自由とは苦労をしないですむようになることではない。自分の善のために苦労をいとわぬことであり、苦労を喜びの要素にするために骨折ることである」(美田稔訳)

広げ続ける

 池田先生は語っている。
 「世界中が隣人となった今こそ、人類は、心広く互いの多様性から学び合い、差異をむしろ価値創造の源泉としながら、自らの文明・文化をより豊かに高め、そして人類普遍の確固たる倫理を打ち立ててゆくべきであります」
 また、先生はかつて、創価学会の運動の意義を「民衆の安全地帯の拡大」と表現している。
 創価学会は、多様な一人一人をまず、ありのままに受け入れ「安心」で包む。そして、宿命の鉄鎖から解き放たれ、自身の使命の道を自らの力で開いていく(つまり、タゴールが語る意味の「自由」を勝ち取る)生き方を、励ましの対話を通して共有する。こうした「安心」と「自由」の中で、学会員は差異を価値と捉え、互いの差異から学び合っていく姿勢を持つことができる。「安全地帯」とは、そういうことであろう。
 差異への恐れが、不安と諦めを生み出す現代社会において、こうした朗らかな共生の場を世界各地に広げることが、創価学会の存在価値とはいえまいか。

 注 腕の筋肉を動かす際に流れる微弱な電気(筋電)によって機械の指を動かす義手。

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