〈文化〉 変わっていく単位 2018年7月13日


「キログラム原器」に幕 物理定数で、より正確に
臼田孝(産総研・計量標準総合センター長)
キログラム原器(レプリカ)=産総研提供
キログラム原器(レプリカ)=産総研提供

 長さや質量など、国際単位系の7基本単位のうち、キログラム(質量)、アンペア(電流)、ケルビン(熱力学温度)、モル(物質量)の定義が変わろうとしています。今回は、誰にも身近なキログラムの定義変更について、産業技術総合研究所・計量標準総合センター長の臼田孝氏に聞きました。

1リットルの水の重さ

 皆さんは、「1キログラム」というと、何を思い浮かべるでしょうか。ダンベル、米袋、肉……。軽量化が進んだ最近のノートパソコンなども、1キロぐらいかもしれません。
 当初、1キログラムというのは、1リットルの水に相当する質量と決められました。しかし、水の重さは温度によって変化してしまいます。そこで、より安定的に規定するために「国際キログラム原器」が作られたのです。
 1889年、強度が高く、腐食に強い、白金イリジウム合金製の原器(国際メートル原器と国際キログラム原器)が作られ、パリの国際度量衡局に保管されるようになります。以降、この原器の質量が1キログラムであると決められたのです。
 作られた当時、適切な方法で保管されていれば、1万年以上は変わらないと思われていました。しかし、130年たつ間にわずかに変化してしまったのです。同じように作られた副原器と比較したところ、多くの副原器が重くなっていることが分かりました。その大きさは最大で50マイクログラム(=1億分の5キログラム)。指紋1個相当です。
 質量は相互比較しかできないため、どちらが変化したのか分かりません。しかし、定義からすると、国際キログラム原器が1キログラムなのです。
 どうして変化したのかは分かっていません。しかしキログラム原器自体の揺らぎから、質量の単位「キログラム」の正確性は1億分の5程度しかないことがはっきりしたわけです。

日本の技術が貢献

 新しい定義を決める試みは、急に始まったことではありません。元々、原器というのは不安定なもの。いくら慎重に保管しているとはいえ、いつ壊れるか分かりません。そこで、不変な物理量を元にしようという考え方が生まれたのです。
 質量に関しては、二つの方法が考えられてきました。一つは、既知の原子を多数寄せ集めて、原器の代わりを作ろうというもの(炭素原子1モルが12グラムになる)。もう一つは、電磁気力によって発生させた力で質量を定義しようというもの(プランク定数から質量を導く方法)です。この両方から、定義の改定が進められたのです。
 前者は、シリコンの結晶の塊の中にいくつの原子が含まれるかを計算。数えやすいように単結晶であること、同位体(質量が異なる原子)が混じっていないこと、が必要です。そこで、核燃料を濃縮するように、シリコン28を濃縮し単結晶化。体積、質量を計りやすいよう、直径約94ミリの球形シリコンを削り出し、精密に測定しました。
 後者は、「キッブル・バランス」という天秤です。電気で力を発生させ、それでキログラムをつり上げることで、その時の電流値からプランク定数とキログラムを比較します。40年ぐらい前から取り組まれていますが、現在までに十分な精度でプランク定数にたどり着いたのは2、3機関だけという難しさでした。
 このような二つの方法で相互にチェックしながら、慎重に1キログラムとプランク定数を比較決定しました。この決定に寄与できたのは世界5機関だけで、その中には日本が含まれています。このような難しい課題、単位という世界が共有すべき基盤に、日本の技術が貢献できたことは非常に光栄なことです。

今後の発展に期待

 今回の改定で、「キログラムは、プランク定数の値を正確に“6・626070150×10のマイナス34乗ジュール秒”と決めることで設定される」と変わります。
 これまでの「国際キログラム原器」という目に見える形ではなく、物理定数を使った定義で、直感的にイメージしにくいかもしれません。
 でも、プランク定数というのは、さまざまな物理現象の中で登場します。この定義を元にすることで、キログラムをいろいろ表現できるようになったのです。
 つまり、さまざまな展開、決め方の可能性があるということ。例えば、光も圧力を発生させるから、光を当てることで重さが測れるかもしれないとか、静電気力から質量が分かったりなど。
 長さの単位が光の速さを元にするようになって、月までの距離が数センチの誤差で分かったり、干渉計を使って極小スケールの長さを測れるようになりました。今後、質量もこのような技術の発展が期待されています。=談

 うすだ・たかし 1962年、長野県生まれ。産総研・計量標準総合センター長。国際度量衡委員。博士(工学)。通産省・工業技術院計量研究所で振動計測、光波干渉計などの研究に従事。近著に『新しい1キログラムの測り方』(ブルーバックス)がある。

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