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〈小説「新・人間革命」〉 誓願 九十二 2018年7月14日



 法悟空 内田健一郎 画 (6422)

 山本伸一がリオデジャネイロの空港に到着したのは二月九日の午後九時であった。一行を、ブラジル文学アカデミーのアタイデ総裁らが、包み込むような笑みで迎えてくれた。
 総裁は、一八九八年(明治三十一年)生まれで、一九〇〇年(同三十三年)生まれの恩師・戸田城聖と、ほぼ同じ年代である。伸一は、総裁と戸田の姿が二重映しになり、戸田が、自分を迎えてくれているような思いがした。
 総裁と伸一は、互いに腕に手をかけ、抱き合うようにしてあいさつを交わした。
 「会長は、この世紀を決定づけた人です。力を合わせ、人類の歴史を変えましょう!」
 総裁の過分な讃辞に恐縮した。その言葉には、全人類の人権を守り抜かねばならないという、切実な願いと未来への期待が込められていたにちがいない。伸一は応えた。
 「総裁は同志です! 友人です! 総裁こそ、世界の“宝”の方です」
 世界には、差別の壁が張り巡らされ、人権は、権力に、金力に、暴力に踏みにじられてきた。「世界人権宣言」の精神を現実のものとしていくには、人類は、まだまだ遠い、過酷な道のりを踏破していかなくてはならない――総裁は、そのバトンを引き継ぐ人たちを、真剣に探し求めていたのであろう。
 翌十日、伸一は、リオデジャネイロ市内で行われた、リオの代表者会議に出席した。彼は、明十一日が戸田城聖の生誕九十三年の記念日であることから、恩師の指導を引きながら、仏法と社会生活について言及した。
 「戸田先生は、次のように話されていた。『御本尊を受持しているから、商売の方法などは、考えなくても、努力しなくとも、必ずご利益があるんだという、安易な考え方をする者がいるが、これ大いなる誤りであって、大きな謗法と断ずべきである』(注)」
 戸田は、日蓮仏法は、いわゆる“おすがり信仰”などではなく、御本尊への唱題をもって、わが生命に内在する智慧を、力を引き出し、努力、活用して、価値を創造する教えであると訴えたのである。

 小説『新・人間革命』の引用文献
 注 「天晴れぬれば地明かなり法華を識る者は世法を得可きか」(『戸田城聖全集1』所収)聖教新聞社

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